好きになんてできるか!
今では歌をやって声の研修をしている私が、声が出せなかった時期があります。
学生の頃、仕事を始めてからでしょうか。
その頃ボチボチ演奏する仕事を色々なジャンルからいただいて、クラシックしか知らない私は目を白黒させながらも刺激的な環境にいることが嬉しかったです。
声を楽器、商売道具としていますから、何でもできるという訳ではなく、向き不向きもありました。
大好きな曲やジャンルでも歌いこなせないことは出てくるのです。
自分の身体能力に絶望したり、希望をもったり、今思うと振り回されっぱなしで大変だったなぁと思います。
そんな中で当時どこへ行っても必ず同じことを言われました。
「もっと好きにやりなよ。面白くないんだよ。
品がいいのは見た目だけで充分だからさ」
これには本当に参ってしまいました。
面白い演奏って何?
下品にやれってこと?
この人の思う面白い、下品って何だろう?
それまで学校生活を含めて
「しっかり教わる」
「言われた通りにやる」
「試験などで教わったことを言われた通りにできているか確認する」
ばかりやってきたのです。
そうすれば怒られないし、場合によっては褒められちゃうし。でもそんなことは滅多にないですけどね。
「面白く」「品よくなくていいから」
「好きにやりなよ」
ここまでやってきた事が全て否定された気分でした。
「どのようにしたら良いのでしょうか?」
(なんてお利口さんでおバカな質問なの⁈)
と聞いても
「知らないよ。俺はアンタじゃないから」
しか返ってきません。(そりゃそうだ)
譜読みは早い
音程は正確
声はきれい
の私があと身に付けるべきものは表現力だ!という結論を出したのですが、文字通り悪戦苦闘でした。
表現することは立場を守るのとは正反対です。
丸裸になって評価されて、二度と浮上できない気がしたのです。
そのうち人と話ができなくなりました。
そしてとうとう歌を唄うにも声が出なくなりました。
「私には向いていないんだな」
なんて自分を慰めてみたりしても辛かったですね。
声が出せなくなって、表情も乏しくなる、身体も硬直したまま、ピアノも弾けなくなりました。月の半分は高熱を出すようにもなりました。
そんな状態が1年くらい続きました。
しぶといですねー。
ある日、高熱出しながら歌う機会がありました。クラクラしていてどんな演奏だったかわかりません。
でも歌いながらいっぱい汗をかいて、だんだんと頭の中がクリアになるのがわかりました。
その時初めて「演奏が楽しい!」と思えたのです。
どう歌ったかわからない、汗でドロドロになったメイク、体に張り付いて汗染みだらけのドレス、全てがイマイチの中、
「なんだよ、こういう演奏もできるじゃん」
と声をかけてもらったのです!
「好きにやり放題の演奏だったね」
とも言われ、ポカーンとしてしまいました。
熱も下がっちゃいました!
(あの時のサックスとギターの方ありがとう!)
表現しきれた幸福感は、立場にしがみつく苦痛を遥かに上回ります。
「好きにどうぞ」は「今いる場所から抜け出なさい」という意味だったのだと後になってようやくわかりました。
もう少し丁寧に言って欲しかったなぁと今は思いますが、当時はどんなに丁寧に言われてもわからなかったでしょう。
あれで充分だったのです。
声が出るということは、自分を表現すること。
表現することは、自分にダメ出しすることではありません。
優等生でお利口さんな人が本当に多いからこそ
好きにやっていい!のです。
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